The Future Lost in Type
Vol.03 Segment Display
文字の中に消えた未来 —Vol.03 セグメントディスプレイ—
セグメントディスプレイ
「Wargames」の後半にAIの暴走がスピードアップするシーンで効果的につかわれるもう一つの文字スタイルがある。いわゆる「デジタル時計の数字」でお馴染みのセグメントディスプレイだ。
70年代以降、液晶やLEDのセグメントディスプレイは電卓や腕時計として家庭に普及していて、未来感をもった時代の進歩を感じることのできる馴染み深いアイテムであり、デジタル=セグメントディスプレイというほど現在に至るまでエレクトロニクスやコンピューター装置の可視化の記号として様々な演出に持ち込まれてきた。
日用品や普及品を用いて最大限にSF感を引き出すサバービアSFにとって、ひと目見てで何らかのシステムが動いていると認識でき、安価かつ確実に近未来のテクノロジー感を演出することのできる、このセグメントディスプレイは欠かすことのできないアイテムだ。特に有名なのは同じく80年代のサバービアSFの金字塔「バックトゥザ・フューチャー」のデロリアンのタイムサーキットだろう。民生品の組み合わせでタイムマシーンを作ることができるというこの時代ならではのありえそうな空想と現実と結びつける役目を果たしている。
「Wargames」での使われ方は、メインのスクリーン付近や、コンピューターターミナルの一部などに用いられ、ストーリーと関係する部分では、軍の核ミサイル発射装置の暗号をAIが解いていく際に、AIを表すベクター文字との対比で、ミサイル側の装置として赤いLEDの16セグメントディスプレイがつかわれている。
セグメントディスプレイの文字
セグメントディスプレイは科学技術の合理性に則して字形がつくられた技術由来の文字です。基本的な原理は、あらかじめ区画された7つの線の表示・非表示の組み合わせによってアラビア数字を表現する7セグメントにあります。電信などで数字を認識・表示する合理的な方法として1900年初頭に原理が発明され、1970年代にLEDの登場により普及しました。LEDのほかに、蛍光表示管(VFD:Vacuum Fluorescent Display)、液晶ディスプレイ(LCD)、近年ではドットマトリクスLCDなどで利用されています。
7セグメントは主にアラビア数字の表示が目的で、ドットマトリクスの普及までの間、セグメント数を増やしてアルファベットの表示文字を増加させる方法が試みられ、8、9、14、16セグメントなど表示文字の向上を試みていた時期があります。ドットマトリクスの登場でセグメントでの文字表現の追求は終焉を迎えましたが、数字の視認性の高さから多くの場面で数字の表示用の文字として現在も使われています。
7セグメント
7つ全てのセグメントを表示状態にすると数字の8となり、セグメントの表示・非表示の組み合わせで数字を表現する。基本的には数字の表示がメインだが、「ON・OFF」や「PLAY・STOP」などの操作の簡易表示に限られたアルファベット表現が用いられることもある。
ロシアン8セグメント
敵国側ソビエトの軍事関連でつかわれていた風変わりな8セグメント。数字・アルファベットとキリル文字を表示することができる。直線と短い斜線の組み合わせで少ないセグメント数でMやW、K、Xの表現が比較的認識しやすい。
16セグメント
7セグメントを基本に縦の中心分割線とX状の斜線が追加された14セグメントからさらに3本の横線を分割させ16セグメント。ラテンアルファベットの大文字・小文字の表示を目的に作られた。組込システムなどのディスプレイに利用されていた。映画の核施設で利用されていたのがこのスタイル。
セグメントディスプレイは、完全に技術由来の字形のため、数字の表現に関しては数理的に整って感じるのですが、アルファベットを表示させた場合、どうしてもバランスが悪く違和感がとても強くなります。そしてそれは、まるで機械とコミュニケーションをとるための暗号のような存在として長らく人々に苦労を敷いていました。90年代くらいまでのビデオデッキやCDプレーヤーなどのセグメントディスプレイをつかった設定は、現在のような考えられたUIの時代とは比べ物にならないほど不自由ですが、その不自由さは時代を経てしだいに哀愁をさそう存在になってゆきます。不自由さこそが、忘れられた時代に愛しさに変わってゆく。それがエレクトロニクスにおけるノスタルジーの原点なのかもしれません。